今回は知っているようで知らないマンション(集合住宅)の床面積の考えたをお話ししたいと思います。
マンションの床面積を計算する方法が2つあるはなぜ?
Ⅰ:マンションの部屋の広さには、内法と壁芯の2通りある
不動産の床面積を考える際には、大きく分けて2つの算出法があります。
1つは「壁芯(へきしん)面積」、もう1つは「内法(うちのり)面積」です。ここで、考え方の違いを押さえておきましょう。
<壁芯とは>
壁の厚みの中心線を想定し、この中心線に囲まれた面積を床面積とするものを「壁芯面積(へきしんめんせき)」と呼んでいます。
壁の中心線を「芯」というのですが、これが問題になるのは、主に建築設計業務です。
※マンションの場合隣室壁は「共有」となるのである意味「国境線」だと考えれば良いでしょう
設計段階では、部屋の居住スペースを考える前に、まず建物の構造的な強度を確保することを第1に考えます。
一般的に、柱や壁が多ければ多いほど、建物は構造的に強くなりますが、逆に、住みやすさや使いやすさは失われます。
そこで、設計者はなるべく柱の数や壁の量を減らそうとするのです。
具体的には、柱と柱の間の距離(「スパン」といいます)を長くしたり、壁と壁の距離を離そうとしたりするわけです。
その際に、構造的に合理的かどうかが重要なポイントになるのですが、構造設計では柱や壁の中心または中心線で計算します。
そのため、意匠や設備も含めて、建築設計では壁芯を基準にして、お互いの設計内容にズレが出ないようにしているのです。
<内法とは>
壁芯で面積を出す考え方とは異なり、壁の内側の線を基準にした面積を床面積とする計算方法を
「内法面積(うちのりめんせき)」とよびます。
内法面積というのは、実際に目に見える範囲で考えた広さともいえます。
居住者の立場に立って考えれば、目に見えていて、実際に使える部分の面積が重要です。
壁から壁までがどれくらいの距離があるのかによって、配置が可能な家具の大きさが決まるからです。
そこで、物件賃貸で部屋の広さが問題になる不動産業界では、この内法が基本となっています。
<壁芯面積と内法面積の差>
簡単に言えば壁の厚みの半分が部屋の面積に含まれることになるため、実際の部屋の広さとは誤差が生じます。
大雑把にいうと内法の方が5%くらい狭いとされており、壁芯で80㎡の部屋でも内法では76㎡くらいになってしまいます。
Ⅱ 登記簿には壁芯ではなく、完成後測定された内法での面積が記載
マンションの場合、建物が完成するよりもはるかに以前からモデルルームを使用して販売活動が始まっています。
マンション販売時に示される資料にはすべて壁芯で計算した面積が記入されています。
建築基準法において床面積は「建築物の各階又はその一部で壁その他の区画の中心線で囲まれた部分の水平投影面積による」と
定義され、自治体に建築物建設許可を受けるための建築確認申請をするときなどは壁芯面積で床面積を求めています。
壁や柱の中心部の寸法を測定することは現実問題として不可能であるため、壁芯というのは図面上でしか計算できない面積です。
一方内法の面積を計算するためにはでき上がった室内で測定しなければならず、建物が完成しないと測定できません。
建設中の段階ですから室内の寸法を測定することなどできないため、面積に関しては壁芯によるものしか提示できません。
実際の面積と異なる算出法が一般的に通用している背景にはこのような事情があるのです。
しかし登記簿には完成後に測定された内法での面積が記載されています。
これをもとに所有財産として固定資産税等の建築物所有物面積が算出されることになります。
Ⅲ 内法面積で特に注意すべき点
住宅ローン控除や、不動産取得税・登録免許税の軽減措置を受けようとする場合には、床面積にとくに注意が必要です。
要件として、自己居住用であることなどの他に床面積が40平方メートル以上あることが基本になります。
※2021年度より床面積50㎡以上→40㎡以上に改定されました
この際の面積算定に使われるのは、不動産取引に関わる床面積なので、壁芯面積ではなく、内法面積なのです。
パンフレットで45平方メートルと記載されていても、登記面積としての内法面積が39.8平方メートルだったとします。
この場合、優遇措置を受ける要件を満たしていないことになるのです。
優遇措置などで問題になる物件の内法面積の確認の仕方は、中古物件と新築物件で異なります。
中古マンションなどを購入する際は、登記簿に記載された登記面積が内法面積になります。
一方で、新築マンションではこの方法で確認できないことがあります。
最も簡単で確実な方法は、情報を把握している販売会社に確認することです。
税制上重要ポイントとなる「内法面積」については当店でもおすまいさがしの重要ポイントとなっています。
またアドバイザーとして税理士・弁護士もおりますのでお気軽にご相談可能です。